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MESA(最大エントロピー法)& ウェーブレット サイクル解析

John F. Ehlers の MESA(最大エントロピー法) と 連続ウェーブレット変換(CWT / Morlet) を組み合わせ、金融市場における価格サイクルの周期を高精度で特定します。

MESA(最大エントロピー法)

MESA(Maximum Entropy Spectral Analysis) は、信号処理の分野で開発されたスペクトル推定手法で、John F. Ehlers により金融市場に応用されました。
MESAは、短いデータからでも高精度で周期(支配的サイクル)を検出できるスペクトル推定法です 。
通常のFFT(高速フーリエ変換)は「データが十分に長い」ことを前提としますが、MESAは「既知のデータを使い、エントロピー(情報の不確かさ)が最大になるよう未知部分を推定する」というベイズ的な発想で、少ないデータ点でもシャープな周期ピークを得られます 。

金融市場での特徴:
相場は常に周期が変化するため、直近100本程度のデータで現在の支配的サイクルをリアルタイム検出できる。

弱点:

  • ARモデルの次数(ラグ数)の選択によって結果が変わるため、パラメータ設定に経験が必要
  • ノイズが多い相場ではスプリアス(偽の)ピークを検出しやすい
アルゴリズムの核心:Homodyne Discriminator

  1.  価格を4期間加重移動平均(WMA)で平滑化し、トレンド成分を除去するデトレンダーを適用
  2.  同相成分(In-Phase / I)と直交成分(Quadrature / Q)を抽出
  3.  ホモダイン判別器により1バーあたりの位相変化量を計算
  4.  位相変化量から支配的サイクル(DC: Dominant Cycle)の周期を推定
  5.  Sine Wave と Lead Sine(45°位相進み)を出力し、サイクルの転換点を検出

MESA の特徴

  • 適応型アルゴリズム:市場が変化する周期に自動追従(固定パラメータ不要)
  • リアルタイム性:各バーで即時に支配的周期を更新
  • ノイズ耐性:EMA による段階的平滑化でランダムノイズを除去
  • 位相情報:現在の位相角(0〜360°)を提供し、サイクル内のポジションを把握可能

出力指標

指標名 値の範囲 意味
DC Period 6〜50 bars 現在の支配的サイクル長(バー数)
Sine Wave −1〜+1 現在のサイクル位相のサイン値(シアン線)
Lead Sine −1〜+1 45°位相進みのサイン値(ゴールド破線)
DC Phase 0〜360° 現在の位相角

ウェーブレットスペクトル分析(Morlet CWT)

連続ウェーブレット変換(CWT) は、時間と周波数を同時に分析できるスペクトル解析手法です。

フーリエ解析の最大の弱点は「時間情報を失う」ことです。例えば「4週間サイクルが存在した」はわかっても、「それがいつ強く、いつ消えたか」はFFTではわかりません。
ウェーブレット変換はこれを解決するため、時間軸と周波数軸を同時に保持する2次元のスペクトル(スカログラム)を生成します 。波形を「周波数が異なる多数の小波(ウェーブレット)」に分解し、「どの時期にどの周期成分が強かったか」を地図のように可視化します。

金融市場での特徴:
金融時系列は周期が時間とともに変化する典型的な「非定常」データであり、ウェーブレットはこれに最も適合した手法。
日本銀行金融研究所もウェーブレット分析を経済時系列分析の標準的手法として採用し、景気サイクルとトレンド分解に活用しています。2015年のarXiv研究では、先進国・新興国含む複数株式市場にウェーブレットスペクトル分析を適用し、市場横断的に共通する9つの周期区間を確認しています。

弱点:

  • FFT・MESAに比べて計算コストが高い
  • 「どのウェーブレット基底(Morlet, Haar等)を使うか」の選択が結果に影響する
  • リアルタイムトレードへの即時適用はFFT/MESAより難しい

金融占星術との組み合わせという観点では、MESAで現在の支配的サイクルをリアルタイム確認し、ウェーブレットで惑星サイクル(木星12年・土星29年等)が過去にいつ市場に影響を与えたかをバックテスト的に検証するという使い分けが、非常に合理的なアプローチになります。

CWT vs FFT — 金融分析での優位性

  • FFT(高速フーリエ変換):全期間の平均スペクトルしか得られず、サイクルが「いつ」存在したか不明
  • CWT:時間軸を保持したまま各時点のスペクトルを計算 → サイクルの出現・消滅・強度変化を追跡可能
  • Morlet ウェーブレット:ガウス包絡線 × 正弦波で構成され、周期推定精度と時間分解能のバランスが最良
  • 対数スケール:短周期(4bar)から長周期(120bar+)まで均等な解像度でスキャン

ウェーブレット変換の処理フロー

  • 価格データを対数収益率に変換(DC バイアス除去)
  • 対数スケールで minPeriod〜maxPeriod の範囲に 40 スケールを配置
  • 各スケールで Morlet ウェーブレットとの畳み込みを実行
  • パワー(振幅の二乗)を計算し、時間 × 周期の 2D マトリクスを生成
  • ガウス補間によりピーク周期を高精度で特定(サブスケール精度)

2D パワースペクトルの読み方

表示色 意味
深い青 非常に弱いパワー(その周期のサイクルはほぼ存在しない)
シアン 低〜中程度のパワー
強いパワー(サイクルが活発に機能している)
非常に強いパワー(支配的サイクル)

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チャートオーバーレイ(MesaWaveletLayer)

メインのローソク足チャート上に以下をSVGで描画します。

  • MESA Sine Wave(シアン実線):現在のサイクル位相のサイン曲線
  • Lead Sine +45°(ゴールド破線):45°進んだ位相のサイン曲線
  • クロスオーバードット:SineとLead Sineが交差した時点に●を描画
  • 緑●:Sine が Lead Sine を上抜け → サイクル上昇局面への転換シグナル
  • 赤●:Sine が Lead Sine を下抜け → サイクル下降局面への転換シグナル

サブパネル(MesaWaveletPanel)

メインチャート下部に Canvas 描画する 2 分割パネルです。

上半分:DC Period MESA が推定した支配的サイクル長(バー数)を折れ線で表示。Y軸は 6〜64+ bar スケール。
下半分:Wavelet Heatmap Morlet CWT の 2D パワースペクトルをヒートマップで表示。X軸=時間、Y軸=周期長(下ほど短周期)。

検出サイクルパネル(DetectedCyclesPanel)

チャート右上にフローティング表示されるサイドパネルです。

  • MESA Dominant Cycle:最新バーのMESA支配的サイクル長を大きく表示
  • Wavelet Peak Cycles:ウェーブレット平均スペクトルのピークをパワー降順で最大8件列挙
  • 各サイクルにバー数・暦日換算・パワー(%)・強度(強/中/弱)を表示
  • サイクル強度は色分けで識別(緑=強、金=中、橙=弱)
  • Cycle Strength Map:全スケールの平均パワーをミニバーグラフで可視化、ピーク位置をマーカー表示
  • 時間足連動:選択中の時間足に応じて暦日換算を自動更新

設定 UI(MesaWaveletSettingsUI)

設定パネルから以下のパラメータをリアルタイム調整できます。

パラメータ 範囲(デフォルト) 説明
Alpha(α) 0.01〜0.20 (0.07) MESA の EMA 平滑化係数。小さいほど平滑(反応が遅い・ノイズ少)、大きいほど敏感(反応が速い・ノイズ多)
Wavelet Min Period 2〜16 bars (4 bars) ウェーブレット探索の最短周期。短期サイクル(デイトレ)を含めたい場合は小さく設定
Wavelet Max Period 32〜256 bars (120 bars) ウェーブレット探索の最長周期。週足で月次〜季節サイクルを見たい場合は大きく設定

暦日換算(多時間足対応)

時間足を選択すると、バー数が自動的に暦時間に換算されます。

時間足 換算ロジック 表示例(20 bars)
1分足 × 1分 20分
5分足 × 5分 100分 (1.7h)
15分足 × 15分 5.0時間
1時間足 × 1時間 20時間 (0.8日)
4時間足 × 4時間 80時間 (3.3日)
日足(D) × 1日 20日 (2.9週 / 0.7ヶ月)
週足(W) × 1週 20週 (4.6ヶ月 / 0.38年)

操作方法

モジュールの有効化

  • 設定パネルを開き「MESA & Wavelet」スイッチをオンにする
  • チャートにオーバーレイとサブパネルが自動描画される
  • 右上に「DETECTED CYCLES」パネルが表示される

時間足の選択

  • 画面上部の時間足セレクターから分析対象の時間足を選択
  • 選択すると暦日換算値がすべてのパネルに即時反映される
推奨時間足の使い分け

  • スキャルピング(1〜15分足):Alpha を 0.1〜0.15 に上げ、Wavelet Min を 4〜8 bars に設定
  • デイトレ(1〜4時間足):デフォルト設定(Alpha=0.07, Min=4, Max=120)が有効
  • スイング(日足):Wavelet Max を 128〜200 に拡張し、中期サイクルを探索
  • ポジション(週足):Wavelet Max を 64〜128 に設定し、季節・年次サイクルを確認

パラメータ調整

Alpha(MESA 平滑化)

  • 0.07(デフォルト):ほとんどの市場・時間足に適した汎用設定
  • 0.04〜0.06:長期サイクルを重視したい場合。ノイズを強く排除
  • 0.10〜0.15:短期サイクル重視。価格変動への反応速度を上げる
  • 0.15〜0.20:高ボラティリティ環境や超短期取引向け

Wavelet Min / Max Period

  • Min Period を下げると短期サイクルの検出精度が向上するが計算負荷が増加
  • Max Period を上げると長期サイクルまで探索できるが、分解能が粗くなる
  • 両者の比(Max/Min)が大きいほど広い周期帯域をカバー

サイクルリストの読み方

「DETECTED CYCLES」パネルの各項目の見方:

表示項目 意味と活用方法
MESA DC (上段大数字) 現在バーのMESA支配的サイクル長。最も信頼性の高いリアルタイム周期推定値。この値を次の転換点予測に活用する。
#1〜#8 (Wavelet Peaks) ウェーブレット平均パワーのピーク周期リスト。パワー降順で表示。表示範囲内で最も活発に機能しているサイクルを上位に示す。
POWER % そのサイクルの相対的な強度(最強=100%)。70%以上が「強」、40〜70%が「中」、40%未満が「弱」。
≈ 暦日換算 バー数を選択時間足の暦時間に換算した値。日足で「20日(2.9週)」など直感的な確認が可能。
Cycle Strength Map ミニバーグラフで全スケールのパワー分布を表示。縦線マーカーがピーク周期位置。山が鋭いほどサイクルが明確。

チャートの操作

  • スクロール:時間軸方向にパン(過去・未来方向への移動)
  • 表示範囲を変更すると、ウェーブレットピーク検出とサイクルリストが自動再計算される

転換点の読み方

MESA Sine Wave クロスオーバーの解釈

【緑●】Sine が Lead Sine を下から上抜け:サイクルの底(低点)が近い → 上昇転換候補

【赤●】Sine が Lead Sine を上から下抜け:サイクルの天井(高点)が近い → 下降転換候補

注意:Sine Wave はサイクルモードでのみ有効。レンジ相場では機能するが、強いトレンド相場では偽シグナルが増加する。

他のテクニカル指標(サポート・レジスタンス、ボリューム等)と組み合わせてフィルタリングを推奨。

注意事項

免責事項

本モジュールが提供するサイクル分析は、過去の価格データに基づく数学的分析であり、将来の価格動向を保証するものではありません。

投資判断はご自身の責任で行い、本ツールの分析結果のみに基づいた売買は推奨しません。

必ず他のテクニカル指標・ファンダメンタル分析・リスク管理と組み合わせてご使用ください。

  • 短期的なノイズや突発的なニュースイベント(FOMC・決算等)はサイクル構造を一時的に破壊する
  • ウェーブレットで検出されたサイクルが今後も持続するとは限らない(市場体制変化に注意)
  • サイクル強度(POWER%)が低い場合は、そのサイクルへの依存を避けること
  • 金融占星術との統合分析を行う場合も、サイクル周期が惑星周期と一致する場合の相関には統計的検証を推奨する

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